ESよりAI面接の方が、受検率も移行率も高かった。——エン新卒採用 AI面接導入の全貌と正直な失敗談
ポイント
- ESをAI面接に置き換え、学生の思考・人柄・熱意をより深く把握
- 受検率83%・人事面接の合格率1.4倍・選考工数20%削減を実現
- AIに初期選考を任せ、人事は「人にしかできない深い対話」へ集中
エントリー数が増え続ける新卒採用において、人事の選考工数はピークを迎えています。エン株式会社では2026年のサマーインターンシップ選考から、これまでのエントリーシート(ES)選考をAI面接に代替しました。本記事では、AI面接導入の背景から具体的な成果・AI面接の限界までを、実際に導入を担当した俵さんへのインタビュー形式でお伝えします。
1. ESでは「会いたい人」に会えない。そのジレンマがAI面接導入の出発点だった
ー今回のサマーインターンシップ選考でESをAI面接に切り替えた、ということですが、背景にはどんな課題があったのでしょうか。
俵さん:大きくは2つです。まず面接工数の大きさ。インターンシップ期は年間1,000件程度の面接があり、面接の設定・面接官のアサイン・評価の回収といった作業に膨大な時間がかかっていました。エントリー数が多い分、この工数がピーク時に一気に集中してしまう構造になっていました。
ーもうひとつの課題はなんでしょうか?
俵さん:人事面接の合格率の低さです。多くの時間を使っているにもかかわらず、次のステップに進む学生さんはごく一部だけという状態でした。
これは人事にとって大変なのはもちろん、多忙な学生さんの立場にたっても、「貴重な時間を使って面接を受けて不合格になる」という体験を生んでいる。それが正直ずっと気になっていました。
ーその課題に対して、なぜAI面接という選択肢を選んだのですか?
俵さん:ESよりも濃い情報をもとに初期選考ができると考えたからです。ESは文字情報だけ。生成AIの普及もあって、あまり個人間で差がつかなくなってきていると感じていました。
AI面接なら口頭での論理性・思考の筋道、さらには学生さんの人柄や熱意まで確認できます。「本当に会いたい人と面接ができる」状態を作れるかもしれない、という期待がありました。そこで、選考フローにおいて、ESをAI面接に変更することにしました。

2. 「設計なしに入れても、ただのツールで終わる」——導入前にやるべきこと
ー課題が明確だったからこそ、導入に踏み切れたんですね。準備はどう進めましたか?
俵さん:まずはESで使っていた評価項目を参考に、AI面接の評価方法を設計しました。評価項目の定義、各評価段階の定義、「発話内容で評価するか」「映像(表情・態度)で評価するか」という評価範囲の設定まで、かなり細かく詰めていきました。
ー評価設計で特に気をつけたことはありましたか?
俵さん:まず大事なのが、評価基準から曖昧な表現を排除することです。「頻度高く実施している」「意識している」「頑張っている」といった言葉は、人によって解釈が異なります。
AIも同じで、こういった言葉の裏にある暗黙知を読み取ってくれない。「頻度高く」とは具体的に週何回なのか、「頑張っている」とはどういう行動なのかを、解釈が分かれない言葉で書き直す必要があります。
【曖昧な表現 → 具体的な表現への書き換え例】
→ AIによって解釈が分かれてしまい、評価に差がつかない
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ー逆に、具体的にしすぎるのも注意が必要と聞きました。
俵さん:そうなんです。これも実際にやってしまった失敗なんですが(笑)。「学生時代に力を入れてきたことを評価する」という項目に、「野球部などの部活で、チャレンジングな目標を掲げてやり切ったかどうか」という評価基準を設定してみたことがありました。
でもそれだと、野球部や運動部に入っている学生さんの評価が高くなって、そうでない学生さんの評価が低くなってしまったんです。「具体例があった方がいい」と思い設定したものの、当社としては野球部や運動部に入っているかどうかは、評価の対象外です。こうした直球すぎる誤認は、暗黙知を読み取れないAIならではだと感じました。
ー評価したかったのは「野球部かどうか」「運動部かどうか」ではないですよね。
俵さん:そうなんです。「チャレンジングな目標を掲げてやり切ってきたかどうか」だけにすれば、サッカーでも文化系の活動でも正しく評価できます。具体例を入れることで意図せずバイアスが生まれてしまうことがある。曖昧すぎず、かつ具体的すぎない——このバランスを取るのが、評価設計で一番難しいところでした。
【具体的すぎる表現の例】
→ 野球部や運動部の学生さんの評価が高くなるバイアスが発生
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ーAI面接の質問の設計はどう進めましたか?
俵さん:冒頭質問と深堀質問の2種類に分けて設計しました。冒頭質問は評価の話題を引き出すための入り口、深堀質問は評価に必要な具体的な要素を聞くための質問です。この設計が甘いと、AIが必要な情報を引き出せずに評価に差がつかない。ここも頭を悩ませたところでしたね。
ー他には導入前に実施したことはありますか?
俵さん:学生さんの立場にたって、何度も自分たちでAI面接を受検してみました。いわゆるテストプレイです。自分で受検してみると、いろいろ気になるんですよ(笑)。「この質問、答えにくいな」とか「この評価、感覚と違う」とか。問題があれば設計に戻って修正する、を繰り返しました。
テストの際のポイントは、AIが仮判定する評価点数にこだわりすぎないことです。最終の合否判断は人間がすることを決めていたため、点数そのものより「評価に必要なエピソードが取れているかどうか」を重視して確認していました。学生さんの気持ちになって確認してから本番稼働に入る、というプロセスをきちんと踏んだことが、後々の精度につながったと思っています。
3. AI面接受検率83%。学生さんの抵抗感は、思っていたより低かった
ーAI面接を導入して、どんな結果になりましたか?
俵さん:数字的にはこちらの結果でした。
【AI面接導入の効果】 AI面接受検率 83%(ES提出率70%を上回る) 人事面接の合格率 ESからAI面接に変えたことで、1.4倍にUP 人事面接の工数 20%削減 |

ー受検率83%は、ES提出率70%を上回る結果でした。正直、驚きましたか?
俵さん:驚きました(笑)。「AI面接って学生さんに受け入れてもらえるのかな」という不安がチームの中にもあったので。でも蓋を開けてみたら、むしろESより受検してくれた。「いつでも受けられて便利」「新しい体験で面白かった」という声が届いて、ちょっと拍子抜けするくらい素直に受け入れてもらえたんだなと感じました。
ー受検率が高かった背景に、AI面接の案内文の工夫もあると聞きました。
俵さん:AI面接の案内文は本当に重要でした。工夫せずに「AI面接やります」とだけ伝えていた時期は、「機械的に落とされるのではないか」「ちゃんと見てくれないのではないか」という声が学生さんから上がっていました。
そこで、最終判断は人が行なうこと、そして「皆さんのことをちゃんと評価したい」というスタンスでAI面接を入れているんだ、というメッセージを案内文に明記するようにしました。具体的には以下のような内容を添えた案内文にしています。
【案内文に添えた内容】
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4. 数字が示す成果と、使ってみてわかった「正直な限界」
ー初期選考をエントリーシートからAI面接に変えたことで、その後の人事面接の合格率が1.4倍になったとのことですね。
俵さん:そうなんです。これが一番嬉しかった結果でした。仮説通り、AI面接はESよりもずっと濃い情報が手に入ることが分かりました。ESは文字情報だけですが、AI面接は深掘りができる。「なぜそう考えたのか」「具体的にどんな行動をとったのか」「他にはどんなことを検討したのか」——こういった問いかけをAIがしていくことで、学生さん自身が事前に用意してなかったであろう発言をすることがあるんです。
その瞬間が見えたとき、「ああ、この方の新たな一面が見えたな」と感じます。ESでは絶対に出てこない情報です。そうした濃い情報があるからこそ、初期選考としての判断の質が上がる。それが人事面接の合格率1.4倍という結果につながったのだと思っています。
ー工数が20%削減されたことで、採用の現場はどう変わりましたか?

俵さん:新卒採用では、学生さんの原体験や価値観を紐解いて、自社の文化とフィットするかを確認することが本質だと思っているんです。本人以上に本人のことを理解し、言語化できるかどうか。でもそれは人にしかできないことで、AI面接にはできない。
初期選考をAI面接に任せることで、採用担当者がその「人にしかできない深い対話」に集中できる時間が増えた。それが、現場での一番大きな変化でした。
ー良い結果が出た一方で、やってみて初めてわかった限界もあったと思います。
俵さん:「AIには複雑な対話は難しい」というのは、使ってみて初めて実感しました。人が面接する場合、回答を聞きながらその場で深堀りの切り口を変えられるじゃないですか。でもAI面接にはそこまでの柔軟性はない。現状では、AI面接が人の面接を完全に代替するのは難しい、というのは正直に言っておきたいですね。あくまで「初期スクリーニング・情報収集」の役割、というのが今の自分の結論です。

5. どんな企業がAI面接を導入すべきか。俵さんの考えるシンプルな基準
ー最後に、どんな企業にAI面接が向いていると思いますか?
俵さん:シンプルに言うと、「初期スクリーニングの選考フローがある企業」だと思います。応募者全員と話せるキャパシティがある企業なら、無理に導入する必要はない。でも、一定数の応募者を初期でスクリーニングする必要がある企業にとっては、ESや書類選考の代替として大きな効果を発揮できると思います。
ESよりも濃い情報をもとに選考できるため判断の質が上がりますし、適切な案内文を用意すれば学生さんからの印象を下げることもない。むしろ受検率がESを上回るケースもあります。初期選考の精度と候補者体験を、同時に高められる手段だと思っています。
私たちもまだまだ仮説検証の途中です。AIの限界も理解した上で、人が人にしかできない深い対話に集中できるよう、うまく活用していきたいと思います。
取材後記
ESとAI面接を比較したとき、移行率にどんな差が出るのか——気になっている採用担当者の方は多いと思います。今回の俵さんへのインタビューは、その問いへの一つの実践的な答えになっていると感じました。
「ESよりも濃い情報をもとに判断し、ミスマッチをなくす」「人にしかできない深い対話に集中する」——その目的意識が、成果につながったのだと思います。ぜひ参考にしてください。
エンでは中途採用においても、AI面接を積極的に活用しています。詳細はこちらをご確認ください。
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